米長期金利高は止まらず? 円安急進 S&P500は3か月連続安
アメリカの長期金利高がドル円相場や米株式相場の波乱要因に。FOMCのメッセージ次第で、金利高が加速する可能性も。
アメリカの長期金利(10年物米国債利回り)上昇が金融市場を揺さぶっている。10月31日の外国為替市場では1ドル=151円台後半まで円安ドル高が急進。米国の株式市場でもS&P500種株価指数が10月を2.2%安で終え、3か月連続での月次マイナスとなった。米国の長期金利は10月下旬に一時、16年3か月ぶりの水準となる5%台に到達。その後は4.8%程度で推移しており、円安ドル高や株価下落の要因となっている。米連邦準備制度理事会(FRB)が11月1日まで開く連邦公開市場委員会(FOMC)を契機に長期金利の先高観がさらに強まる可能性もあり、ドル円相場や株式相場に波乱を呼ぶ可能性がある。
ドル円相場は151.円台後半まで円安ドル高が急進
31日のニューヨーク外国為替市場のドル円相場(USD/JPY)の終値は、前日比2.57円の円安ドル高となる1ドル=151.67円だった。日本銀行は31日に大規模金融緩和策の柱であるイールド・カーブ・コントロール(YCC)の再修正を決め、日本の長期金利が1%を超えることを容認。それでも円売りの勢いが増したことになる。財務省の神田真人財務官は11月1日、記者団に対して、「より高い緊張感」を持っていると述べ、為替介入について「スタンバイ」の状況だとの認識を示した。
また、31日のS&P500(SPX)の終値は4193.80。前日比では0.65%高となる一方、9月末比では2.2%安という結果に終わった。S&P500が月次でマイナスとなるのは8月(1.8%安)と9月(4.9%安)とあわせて3か月連続。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年1月から3月にかけて以来の悪い結果となった。
アメリカの長期金利上昇はドル高と株安の要因に
円安ドル高や株価不振の背景にあるのは米国の長期金利上昇だ。31日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.875%で、前日からは0.002%ポイントのマイナス。ただ、23日に5.021%をつけた後も引き続き高水準を維持しているといえる。米国の長期金利は7月中旬以降に1%超上がっているが、日本の長期金利の上昇は0.5%程度で、円よりもドルの方が高い運用収益が期待できる状況が進んでいる。一方、米国の長期金利上昇は、米国内では株式よりも米国債の方が安定的に高い収益が期待できる状況を生んでおり、株式の相対的な魅力を薄れさせている。
こうした構図が今後も続くかどうかのカギを握るのが、物価上昇抑制を目指すFRBの金融政策だ。FRBは11月1日までのFOMCで利上げを見送ることが確実視され、今後の政策金利の行方が注目されている。FRBは9月に2024年も政策金利を高止まりさせる方向性を示しており、今回のFOMC後の声明やジェローム・パウエル議長の記者会見でトーンが変わらなければ、金利の先高感が強まり、さらに長期金利が上昇する可能性もある。
FRBの物価上昇の現状に対する評価は?
一方、FRBにとっては物価上昇をめぐる明るいニュースもある。10月に発表された2023年7-9月期の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、食品とエネルギーを除いたコア指数で前期比年率2.4%まで低下した。FRB幹部からは長期金利上昇が経済活動を冷やす効果を持つことを理由として、さらに利上げを進める必要性が低下しているとの発言も相次いでおり、パウエル氏のメッセージ次第で金利の先高観が弱まる展開も想定されそうだ。
FRBの政策金利は現在、5.25-5.50%に設定されており、2001年初め以来22年ぶりの高さにある。この結果、長期金利は2020年8月の0.5%台から足元の5%台まで上がり、こちらも16年3か月ぶりという歴史的な高水準だ。FOMCに際してこうした流れに変化の兆しが感じられれば、ドル円相場や株式市場の流れが変わる可能性もある
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