注目したい銀行株トップ100
コロナショックに対応するため、世界中の国が大規模な景気対策を導入しています。この政策効果が広がれば、株式市場では金利が上昇するとの観測が、2021年以降徐々に高まってきました。金利上昇の恩恵を受けるのが『銀行セクター』です。ここでは銀行株の特徴と注目の銀行株トップ100についてご紹介します。
銀行株を理解しよう
銀行は個人や企業から預金を預かり、そのお金で企業向けの融資行い、個人向けに住宅ローン融資を提供します。銀行はお金のやり取りを通して経済活動支えているのです。
米国の銀行では、顧客預金の10%をすぐに利用できる状態にしておくことが義務付けられています。残りの90%は貸し出すことができます。
銀行の仕事を簡単に言うならば、お金を持っている人とお金を必要としている人を引き合わせる経済活動を支えることーこれが銀行の仕事です。このため、資金不足に悩む企業は銀行から借り入れして事業を拡大することができます。一方個人は、ローンを組んで家を購入することができます。
2008年に世界金融危機(いわゆるリーマンショック)が発生した時は、流動性が急速に細り世界経済が大混乱に陥りました。このため大手の銀行は過去10年余りにわたりバランスシートの強化、高額な訴訟費用の支払い、よりスリムで効率的な事業への再編成に尽力してきました。そして現在、銀行の経営状態はかなり回復しています。事実、2018年の銀行セクターは、世界金融危機以降で最も利益を上げた年となりました。
しかし、新たな課題も浮上しています。フィンテックと呼ばれるスタートアップ企業が続々と金融業界に参入し、テクノロジーの力で従来の金融業界の在り方を変えようとしています。
一方、昔からある大手銀行の多くは、新たなビジネスを展開するという発想に乏しく、デジタル化の流れにも乗り遅れていました。しかし、こういった流れも近年では急速に変わりつつあります。ハッキングやサイバー犯罪が大きな問題となっているからです。こういった問題に対抗するためには、サイバーセキュリティの強化をする必要があり、各銀行はこの分野に尽力しています。アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young、略称EY)が昨年行った調査によると、世界の銀行の62%が2020年までに「デジタル的に成熟する」と予測しています。2018年の段階では、この割合はわずか19%でした。
銀行に投資する理由
銀行株には、誰もが知る大手企業の名前がズラリと並んでいます。これら大手銀行は、安定的に収益を稼ぐ力があります。このため長期投資に向いているとされます。また、安定的な収益は配当の原資にもなります。
しかし、銀行株は景気敏感株です。世界金融危機やコロナショックのようなリスクイベントが発生すると、業績が悪化するリスクがある点には注意が必要です。
銀行株は、政治や経済に関する新しい情報にいち早く反応するという特徴があります。政権の後退やある経済指標の動向に銀行株のトレンドは左右されることが多く見られます。政治が安定し経済が成長する局面では、銀行株は上昇する傾向にあります。逆に政治や経済の面でリスクが意識される局面では、銀行株は下落する傾向があります。後者の局面では、あえて銀行株を買う投資家がいます。彼らは割安感のある『バリュー株』に注目しています。銀行株は長期投資として保有されやすい株式です。このためバリュー投資家は、銀行株が下落した際に割安感を意識して買いを入れます。そして長期保有することで配当を受け取るのです。一方、割安感が消えたと考える場合、バリュー投資家は銀行株を売ります。
銀行の種類
銀行とひとことで言っても、様々なビジネスがあります。以下では、主要な銀行のサービスについて説明いたします。
リテールバンキング
リテールバンキングは『コンシューマーバンキング』とも呼ばれています。リテールバンキングは、私たちが日常で接する銀行のサービスです。銀行に口座がある顧客は当座預金、当座貸越、クレジットカード、普通預金、住宅ローンといった様々な金融サービスを利用できます。リテールバンキングを展開している銀行は、店舗を設けてサービスを提供するのが一般的でした。しかし、近年ではオンラインでサービスを受けることが可能となっています。
商業銀行
商業銀行は『ビジネスバンキング』と呼ばれています。商業銀行は、個人や法人向けに預金業務や貸出業務を主なビジネスとしています。また、支払い決済手段の提供なども行います。商業銀行の主な収入源は、顧客に提供しているローンや融資から発生する利息です。一般的に銀行は、リテールバンキングとビジネスバンキングの両方のビジネスを展開しています。
コーポレートバンキング
コーポレートバンキングは、商業銀行(ビジネスバンキングビジネスバンキング)と似ています。違う点は、ターゲットとなる顧客層です。商業銀行のターゲットは基本的に個人や中小企業です。一方、コーポレートバンキングは大手企業がターゲットとなります。このためコーポレートバンキングは主に大手の銀行が行うビジネスなのです。
ホールセールバンキング
ホールセールバンキングとは、銀行が企業を相手に融資をしたり、他の大手金融機関(機関投資家)などを相手にデリバティブなどの金融サービスを提供することをいいます。例えば、為替の変動リスクを回避するためのヘッジ取引やオーバーナイトでの資金の貸し付けといったサービスはホールセールバンキングにあたります。
投資銀行
投資銀行とは、企業の株式や債券を発行する業務、合併や買収に関する業務、または投資に関するアドバイスを行う業務を行っている金融機関のことをいいます。投資銀行のターゲットは、主に富裕層または大手企業です。投資銀行の業務は、世界の金融市場のトレンドに影響を与えます。
ウェルスマネジメント
ウェルスマネジメントは、富裕層向けに資産運用や投資戦略の立案といったサービスを提供することをいいます。投資銀行も富裕層をターゲットにしますが、ウェルスマネジメントは富裕層のみをターゲットにする点で投資銀行とは異なります。ウェルスマネジメントの担当者は、投資銀行のサブセクションと見なされる傾向があります。
資産運用
資産運用(アセットマネジメント)とは、銀行が個人や企業に代わって資産を運用することです。資産運用の担当者をアセットマネージャーと呼びます。アセットマネージャーは一般的に投資銀行に属しています。投資対象としている金融商品は株式、為替、債券に商品と様々です。リスクヘッジのためにオプションを取り扱うこともあります。
マーケット
マーケットとは、銀行が世界の金融システムを維持するために提供しているサービスのことをいいます。例えば、金融商品の取引を扱うプラットフォームの提供や金融商品の仲介や決済、またリスクの管理やコンプライアンスに関するアドバイスなどはマーケット業務にあたります。これらサービスは世界規模で広がっており、市場の流動性を維持する上で重要な存在となっています。
金利が銀行株に与える影響
銀行のビジネスは金利の影響を大きく受けます。中央銀行が設定した金利の水準によって、銀行が預金者に支払う金利や利ザヤ収益が左右されます。他の条件がすべて同じであれば、金の価格が高くなるほど金鉱会社の収益が増加するように、金利が高くなるほど預金金利と貸出金利の差額が大きくなることから、銀行の収益も増加します。
しかし、経済の成長を超える金利高は新規融資の需要が減少する要因となります。そして需要の減少は、銀行の収益を圧迫します。また、低金利の局面では、銀行の利ザヤの収益が減少します。
銀行株の分析と比較の方法
これまで見てきたとおり、銀行は様々なビジネスを行っています。このため銀行のビジネスに影響を与える要因も様々です。銀行株に投資をする際には、金利の動向をチェックすることが重要です。多くの銀行は利ザヤを収益源としているからです。また、投資銀行やウェルスマネジメントを展開している銀行を分析する際は、市場シェアを確認すると良いでしょう。これらは手数料ビジネスのため、優良顧客を多く抱えている銀行ほど手数料収入が増加するからです。
銀行株を分析する時、注目すべき指標がいくつかあります。以下では、この点についてお話します。
PERとPBRで株価を相対的に評価する
株式の投資では、企業の株価が過大に評価されているのか?それとも過少に評価されているのか?を見極めることが重要です。一般的に株価が割高なのか?割安なのか?を判断する指標として『株価収益率(PER)』が使われます。PERは、株価をEPS(1株当たり利益)で割って計算されます。株価がEPSの何倍まで買われているか(EPSの何倍の値段が付けられているか)を表す指標です。
PERを使う時は銀行同士を比較することで、割高/割安を判断することをおすすめします。例えば、A銀行のPERが20倍、B銀行のPERが30倍であれば、A銀行の方がB銀行よりも割安と判断します。
企業の株価が過大に評価されているのか?それとも過少に評価されているのか?を見極めるもうひとつの指標が『PBR(株価純資産倍率)』です。この指標は、株価をBPS(一株当たり純資産)で割って計算されます。PBRは株価がBPSの何倍まで買われているか(BPSの何倍の値段が付けられているか)をみる指標です。
BPSは企業の(帳簿上の)解散価値となります。よって、PBRが1倍の企業は、株価と解散価値が同じ水準と判断されます。PBRはPERと同じく、他の企業(銀行)と比較して割高/割安を判断すると良いでしょう。
ROEで収益性を確認する
株式の投資では、より収益性の高い企業に投資をすることが重要です。どの銀行の収益性が高いのか?この点をみる指標が『自己資本利益率(ROE)』です。ROEは、当期純利益を自己資本で割って計算されます。この指標は、企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合を示す指標です。言い換えれば、投資家の資本に対して企業がどれだけの利益を上げているかを表す指標です。
純利子マージン(NIM)も銀行株の投資で使われる指標のひとつです。NIMとは、顧客の預貯金に対して銀行が顧客に支払う利息額と、顧客への融資などの有利子資産から得られる利息額との差のことです。
ここ数年、世界中の銀行は事業のスリム化に尽力し収益性を高めてきました。その成果を測る指標として『Jaws Ratio』があります。この指標は、収入の成長率と支出のそれを比較して、パーセンテージで表します。Jaws Ratioがプラスならば、収益の成長率が支出のそれを上回っていることを示します。逆にJaws Ratioがマイナスならば、収益の成長率が支出のそれを下回っていることを示します。
バランスシートの健全性
バランスシートの健全性は、銀行株を投資する際に重要な判断材料となります。2008年に発生した世界金融危機以降、世界中の大手銀行はバランスシートの改善に取り組んできました。その状況をチェックするため、各国の中央銀行は定期的に監査を行ってきました。そういった取り組みが功を奏し、現在では大手銀行のバランスシートは健全な状態となっています。
中央銀行は、普通株式等Tier1比率(CET1)、Tier1 リスクベース自己資本比率、総リスクベースの自己資本比率、Tier1 レバレッジ比率といった指標を用いて銀行の経営状態をチェックします。例えば英国では、主にCET1を用いての銀行の健全性をチェックしています。CET1では、リスク加重資産が4.5%以上、Tier1自己資本比率が6%以上であることが求められます。これらの水準は、最も厳しい景気後退に直面した時、銀行がそれを乗り切るだけの体力があるかどうかを判断する際の基準となります。比率が高いほどバランスシートの健全性が高いことを示します。
なお、大手銀行の中には自社株買いでバランスシートの健全性を向上させる銀行もあります。
配当金
配当は株式投資において重要なテーマです。国よって配当金を出す頻度は違ってきます。日本では年1回か2回ですが、米国では四半期ごとに配当金が出ます。収益性の高い大手銀行の中には、高配当で投資家に利益を還元する銀行があります。また過去には、好調だった年の後に特別配当金を出すこともありました。
配当を重視する場合、配当利回りを比較することをおすすめします。配当利回りは、1株当たりの配当金を株価で割って計算されます。しかし、配当利回りには注意が必要です。銀行株は景気の動向に左右されます。よって、今は高い配当利回りでも、景気が悪化すると減配により利回りが低下する可能性があります。配当利回りをチェックすることは重要ですが、配当の原資となる収益が今後も継続するかどうか?を見極めるために、これまで述べてきた指標もチェックすると良いでしょう。
IGグループで銀行株を取引するには?
- 株式の投資には、現物の株式を購入する方法とCFDで購入する方法があります。現物を取引する場合は、投資に見合った資金を用意する必要があります。一方、CFDはレバレッジ取引なので、少額の資金で取引をすることができます。両方とも配当を受け取ることができます。
- IGグループではCFDで銀行株の取引ができます。株式CFDでの取引をご希望の方は、IG証券の口座を開設してください。IGグループではデモ口座も提供しています。デモ口座では仮想の資金を使って株式CFDの取引が体験できます。
- 口座を開設後、投資資金を入金してください。
- 入金後、取引プラットフォームから取引したい銘柄を検索します。
- 銘柄を選択したら取引したい売り/買い、ロット数そして取引したい価格を決めてください。
世界の銀行トップ100
以下は、2018年末時点の総資産でランク付けされた世界100大銀行のリストです。詳細は、こちらにあるオリジナルレポートをご覧ください。
企業名 |
本社 |
総資産(10億ドル) |
|
1 |
中国 |
4,027 |
|
2 |
中国 |
3,376 |
|
3 |
中国 |
3,287 |
|
4 |
中国 |
3,092 |
|
5 |
日本 |
2,812 |
|
6 |
米国 |
2,622 |
|
7 |
イギリス |
2,558 |
|
8 |
米国 |
2,354 |
|
9 |
フランス |
2,336 |
|
10 |
フランス |
2,123 |
|
11 |
米国 |
1,917 |
|
12 |
日本 |
1,911 |
|
13 |
米国 |
1,895 |
|
14 |
日本 |
1,848 |
|
15 |
日本 |
1,837 |
|
16 |
スペイン |
1,670 |
|
17 |
ドイツ |
1,543 |
|
18 |
フランス |
1,485 |
|
19 |
BPCEグループ |
フランス |
1,462 |
20 |
イギリス |
1,444 |
|
21 |
中国 |
1,385 |
|
22 |
中国 |
1,383 |
|
23 |
カナダ |
1,039 |
|
24 |
イギリス |
1,016 |
|
25 |
オランダ |
1,015 |
|
26 |
カナダ |
1,006 |
|
27 |
中国 |
980 |
|
28 |
Crédit Mutuelグループ |
フランス |
976 |
29 |
農林中央金庫 |
日本 |
961 |
30 |
スイス |
958 |
|
31 |
興業銀行 |
中国 |
952 |
32 |
イタリア |
951 |
|
33 |
米国 |
931 |
|
34 |
上海浦東発展銀行 |
中国 |
914 |
35 |
イタリア |
901 |
|
36 |
イギリス |
884 |
|
37 |
中国 |
882 |
|
38 |
中国 |
871 |
|
39 |
米国 |
853 |
|
40 |
カナダ |
785 |
|
41 |
スイス |
781 |
|
42 |
スペイン |
774 |
|
43 |
オーストラリア |
691 |
|
44 |
イギリス |
688 |
|
45 |
オーストラリア |
681 |
|
46 |
ラボバンク |
オランダ |
676 |
47 |
フィンランド |
638 |
|
48 |
オーストラリア |
636 |
|
49 |
中国 |
633 |
|
50 |
カナダ |
613 |
|
51 |
DZ銀行 |
ドイツ |
593 |
52 |
オーストラリア |
583 |
|
53 |
ダンスケ銀行 |
デンマーク |
548 |
54 |
インドステイト銀行 |
インド |
538 |
55 |
日本 |
537 |
|
56 |
ドイツ |
528 |
|
57 |
日本 |
520 |
|
58 |
平安銀行 |
中国 |
497 |
59 |
カナダ |
467 |
|
60 |
米国 |
467 |
|
61 |
スペイン |
442 |
|
62 |
米国 |
441 |
|
63 |
オランダ |
436 |
|
64 |
韓国 |
430 |
|
65 |
韓国 |
412 |
|
66 |
ロシア貯蓄銀行 |
ロシア |
412 |
67 |
日本 |
411 |
|
68 |
シンガポール |
404 |
|
69 |
ブラジル |
401 |
|
70 |
米国 |
382 |
|
71 |
華夏銀行 |
中国 |
380 |
72 |
NH農協銀行 |
韓国 |
374 |
73 |
米国 |
372 |
|
74 |
北京銀行 |
中国 |
368 |
75 |
米国 |
362 |
|
76 |
ブラジル銀行 |
ブラジル |
360 |
77 |
ハナ金融グループ |
韓国 |
345 |
78 |
シンガポール |
343 |
|
79 |
ブラジル |
337 |
|
80 |
スウェーデン |
335 |
|
81 |
ブラジル連邦貯蓄銀行 |
ブラジル |
326 |
82 |
ベルギー |
324 |
|
83 |
広発銀行 |
中国 |
318 |
84 |
ネーションワイド・ ビルディング・ソサエティー |
イギリス |
306 |
85 |
韓国 |
305 |
|
86 |
ノルウェー |
304 |
|
87 |
スウェーデン |
288 |
|
88 |
上海銀行 |
中国 |
285 |
89 |
シンガポール |
284 |
|
90 |
江蘇銀行 |
中国 |
282 |
91 |
バンク・ポスタル |
フランス |
280 |
92 |
ドイツ |
276 |
|
93 |
オーストリア |
271 |
|
94 |
中小企業銀行 |
韓国 |
260 |
95 |
スペイン |
254 |
|
96 |
スウェーデン |
252 |
|
97 |
バイエルン州立銀行 |
ドイツ |
252 |
98 |
米国 |
244 |
|
99 |
中国 |
239 |
|
100 |
BFA Sociedad Tenedora de Acciones |
スペイン |
237 |
出所:S&Pグローバル
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