サーキットブレーカーとは?制度や仕組み、導入背景を解説
株式市場におけるサーキットブレーカーとは、株式相場が大きく変動した時に証券取引所が相場を安定させる目的で取引を一時中断する措置のことです。ここでは、制度の仕組みや導入の背景、そして発動基準までわかりやすく解説します。
サーキットブレーカーとはどんな制度か
サーキットブレーカーとは、先物市場などにおいて相場が短期間で大きく変動し、マーケットが過熱してきた際に、取引を一時中断するという措置のことをいいます。サーキットブレーカーの目的は、投資家に冷静な判断の機会を設けることです。
サーキットブレーカの発動基準
サーキットブレーカーはどのようなときに発動されるのでしょうか。
ニューヨーク証券取引所では、サーキットブレーカーの発動基準を3つのレベルに分けています。S&P500指数の前日終値に対してどの程度下落したかによって、レベル1(7%下落)、レベル2(13%下落)、レベル3(20%下落)の3段階のサーキットブレーカーシステムを採用しています1。レベル1またはレベル2の下落では15分間取引が停止され、レベル3になるとセッションの残りの時間中、取引が停止されます。
- レベル1・・・7% 15分間取引を停止
- レベル2・・・13% 15分間取引を停止
- レベル3・・・20% その取引日の残り時間は取引を停止
サーキットブレーカーのシステムは、フラッシュクラッシュの後、さまざまな関係者や金融市場参加者からのフィードバックをもとに、定期的に改訂されています。
サーキットブレーカー 導入の背景
サーキットブレーカーが導入されたきっかけは、1987年米国で起きたブラック・マンデーです。1987年10月19日月曜日、ニューヨーク株式市場は過去最大規模の暴落を記録しました。1日の間に、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が508ドル下落したのです。
この時の暴落は香港、ロンドン、ベルリン、ニューヨークなど世界中の株式市場へ瞬く間に広がりました。1929年のウォール街大暴落以降、1日としては最悪の取引日となりました。
ブラックマンデーはドルの過大評価、金利の上昇、株式市場における投機的バブルの形成によってもたらされたと、一部の経済学者は指摘しています。米国の株式市場は1982年以降上昇し続けていたため、株価が割高の状態になっていました。
またブラックマンデーは、新しく導入された自動売買システムに原因があるとも考えられています。大規模な電子取引の概念はまだ新しく、その機能はブラックマンデーのような事態に直面したことがありませんでした。
1929年のウォール街の大暴落とは異なり、ブラックマンデーは米国経済にそれほど大きな影響を与えませんでした。米国の連邦準備制度理事会(FRB)がすぐに対処に乗り出したためです。FRBは金利を引き下げ、貸し出しを増やし、公開市場での買い入れを行うことにより、株価暴落の影響が拡大することを食い止めました。FRBの対応が功を奏し、米国の経済はその後も成長しました。そしてダウ平均は、2年以内に暴落前の水準へ戻りました。
これをきっかけに、行き過ぎた下落を防ぐため、SEC(米国証券取引委員会)によってサーキットブレーカー制度が導入されます。2012年には標準化され、米国の主要証券取引所のシステムの一部として運用されています。
過去にサーキットブレーカーが発動された事例
記憶に新しい2020年3月には、新型コロナウイルスの世界的流行による市場の混乱を抑止するため、米国市場や日本市場では頻繁にサーキットブレーカーが発動しました。
米国市場では2020年3月9日、S&P500の下落率が7%に達したため、サーキットブレーカーが発動しました。3月12日にも再びサーキットブレーカーが発動。米国でサーキットブレーカーが発動されるのは1997年以来のことでした。
日本市場でも、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から売り注文が殺到したことを受け、3月9日に東証マザーズ指数先物などでサーキットブレーカーが発動しました。その後も混乱は収まらず、米国のように3月中に複数回サーキットブレーカーが発動する事態となりました。
過去にもサーキットブレーカーが複数回発動された事例があります。2011年3月15日、東京電力福島第一原子力発電所から漏洩する放射能濃度が高まっており、さらなる漏洩の可能性も高いと菅直人首相(当時)が指摘。これを受け、原発事故へのリスク意識が高まったことから、大阪証券取引所では日経平均先物に対して15分間の間に2回サーキットブレーカーを発動しました。続いてTOPIX先物も大きく下落し、同日に2度のサーキットブレーカーを発動しました。
国ごとのサーキットブレーカーの違い
米国ではじまったサーキットブレーカー制度は、他の国の市場でも運用されています。
日本
日本では、1994年2月よりサーキットブレーカー制度が導入されています。
日本の取引所では、制限値幅の上限(下限)値段で約定等があった場合には、即時でサーキット・ブレーカーが発動します。中断時間は10分間で、中断の対象となるのは以下の銘柄です。2
1. 先物取引の全限月取引
2. 対象指数(原資産)が同一のオプション取引の全限月取引・全銘柄
3. 1の限月取引に関連するストラテジー取引
4. 1~2の銘柄に係るJ-NET取引
中国
中国市場では、2016年1月4日よりサーキットブレーカー制度を導入しました。導入当日にCSI300指数が7%下落し、サーキットブレーカーが初めて発動。大引けまで取引が停止となりました。
サーキットブレーカー発動の要件は、CSI300指数が5%上昇、または下落した場合です。発動すれば、CSI300だけでなく中国のすべての株価指数・株価指数先物が、取引を15分間停止します。また7%上昇あるいは下落すれば、その日の取引は停止されます。
上海・深センの両証券取引所は、想定通りに機能しなかったとし、1月8日にはサーキットブレーカー制度を廃止。発動の基準が低すぎたなどの要因が指摘されています。
韓国
韓国市場でもサーキットブレーカー制度を採用しています。2021年3月13日、KOSDAQ市場の急落でサーキットブレーカーが発動し、売買取引が一時中断しました。
また3月19日にも、前日の米株式相場の急落を受けて、KOSPIの下落率が8%を超えたため、取引が20分間停止しました。新型コロナウイルスの感染拡大への恐怖感による米国株式相場の混乱がここにも波及したといえます。
サーキットブレーカー制度のまとめ
サーキットブレーカーとは、市場が短期間で大きく変動した際に、市場参加者をクールダウンさせる目的で行われる取引一時停止措置のことです。
1987年のブラックマンデーをきっかけにうまれたサーキットブレーカー制度は、米国をはじめ、日本や韓国でも運用されています。
発動要件は各国で異なりますが、米国市場の場合は3つの段階に分かれており、それぞれのレベルに達した時点で発動されます。
2020年3月には、新型コロナウイルスの感染拡大による不安から米国市場が暴落し、サーキットブレーカーが複数回発動しました。
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