リスクオンとリスクオフとは?
相場の基調を判断する方法の一つに、投資家のリスク選好度によるものがあります。「リスクオン」と「リスクオフ」を見極め、市場の心理状態を把握することで、より正確に取引の方向性を判断できるようになりましょう。
リスクオンとリスクオフの意味とは?株式やFXはどう動く?
まずはリスクオンとリスクオフの意味と、それが株やFXにどのような影響を与えるのか、そしてその判断方法について解説します。
1. リスクオン
株式市場全体が大幅に上昇するのは、リスクが「オン」になっていることの表れです。リスクオンとは、投資家が景気の先行きを楽観視している市場の心理状況のことです。
そのため、投資家は資金を株式市場や高利回りの金融商品に投じます。これにより、通常は株式、そしてオーストラリアドル(AUD)やニュージーランドドル(NZD)といった高金利通貨の価格が上昇しやすくなります。
その一方で、利回りの低い商品は相対的に利益が少ないか、場合によっては価格が下落する傾向にあります。低金利通貨は、高金利通貨を買う資金にするために売られがちです。
このように低金利通貨を売り、その一方で同時に高金利通貨を買うことを「キャリートレード」といいます。つまり、リスクオンのセンチメントは株式相場を上昇させ、高金利通貨の需要を高める効果があります。結果的に、キャリートレードはリスクオンの時に好成績を収めやすい戦略です。
2. リスクオフ
リスクオフとは、投資家が景気の先行きを警戒している市場の心理状況です。したがって、投資家は資金を株式市場や高利回りの金融商品から、比較的安全とされる米国債などに移します。
例えば、株式相場が下落した場合、メディアはリスクオフと決め付けます。こうなると投資家やトレーダーはリスクを嫌い、危険でハイリスクな商品を避けようと考えるのです。そのため、投資家は保有している株を売却して株式市場から資金を引き上げ、高金利通貨のようなリスクが高い商品も売ります。
リスクオフ相場では、キャリートレードはうまく機能しません。トレーダーは日々のスワップポイントで利益を得ていますが、為替相場の動きが不利なためにスワップポイントが帳消しになってしまうからです。
リスクオフの状況では、米ドル(USD)や日本円(JPY)などの避難通貨を買うのが得策です。
3. リスクオンとリスクオフの判断方法
市場のリスクオンやリスクオフを判断する方法には様々なものがありますが、代表的なもののひとつに「VIX指数」があります。VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれ、米国の主要株価指数であるS&P500のオプションをもとに算出される予想変動率のことです。
将来の価格変動が大きいと予想されると、投資家は不安になります。そのため、VIX指数が低いほどリスクオン、高いほどリスクオフと判断することが可能です。
リスクオフで円高が進行する2つの理由
リスクオフで円が買われ、円高が進行する理由には、主に以下の2つが挙げられます。
1. キャリートレードの巻き戻しが起こる
リスクオフではキャリートレードの巻き戻しが起こり、円が買われやすくなる傾向があります。
前述した通り、リスクオンではキャリートレードが活発になります。例えば、金利が低い円で資金を調達し、それを高金利通貨や株式などで運用するといった形です。
しかし、景気の見通しが悪くなり、リスクオフのムードが高まると、今度は流れが逆方向に動きます。つまり、今まで積極的に高金利通貨や株式などで運用していた投資家が、一旦リスクを抑えるためにそれらの資産を売却し、資金を返済するために円を買い戻すことになるのです。
そのため、外貨売り円買いが大量に起こり、FXは円高方向(ドル/円の下落)に動きやすくなります。
2. コンセンサス(共通理解)がある
「リスクオフの円買い」が投資家の間でコンセンサス(共通理解)になっていることも、リスクオフで円が買われて円高が進行する理由の一つです。つまり、投資家やヘッジファンド等のアルゴリズムは、リスクオフを連想させるキーワードに反応して円買いをするようになっているということです。
例えば、「北朝鮮のミサイル発射」や「米中の対立」といったニュースが流れると、「リスクオフ=円高」というコンセンサスの下で、反射的に利益を狙った円買いがおこなわれます。何か悪いことが起きると円が買われるという行動パターンがあることを覚えておくと、円高の流れが理解しやすくなるはずです。
リスクオフでドル高が進行する2つの理由
リスクオフで米ドルが買われ、ドル高が進行する理由には、主に以下の2つが挙げられます。
1. キャリートレードの巻き戻しが起こる
円と同じく米ドルもリスクオフではキャリートレードの巻き戻しが起こり、買われやすくなる傾向があります。
リスクオンではキャリートレードが活発になります。例えば、米ドルで資金を調達し、それを高金利通貨や株式などで運用するといった形です。
しかし、景気の見通しが悪くなり、リスクオフのムードが高まると、今度は流れが逆転します。つまり、今まで積極的に高金利通貨や株式などで運用していた投資家が、一旦リスクを抑えるためにそれらの資産を売却し、資金を返済するために米ドルを買い戻すことになるのです。
そのため、高金利通貨売り・米ドル買いが大量に起こり、FXはドル高方向(ドル/円の上昇)に動きやすくなります。
2. 地政学的リスクによる米ドル買い
地政学的リスクによる米ドル買いとは、地政学的な不安定性が高まると、投資家が米ドルを安全な通貨として求め、その結果、米ドルの価値が上昇する現象です。米ドルは安全資産と見なされていることから、地政学的なリスクが高まると逃避通貨となります。
例えば、大きな戦争などが起こると、新興国の通貨を売って米ドルを買う動きが活発化します。これは、米国が地政学的に安定しており、国際的な取引では米ドルが中心で安心感も高いといった理由からです。
このような要因により、地政学的リスクが高まると、多くの投資家が米ドル資産を保有し、他の通貨を手放す傾向があります。
リスクオフで金(ゴールド)が買われる理由4選
リスクオフでは米国債や逃避通貨だけでなく、金(ゴールド)も買われやすくなります。リスクオフ時に金が買われる理由は、主に以下の4つです。
1. 安全資産として有名
金は安全資産として有名であり、リスクオフで買われやすい傾向があります。つまり、リスクオフ時には資産の逃避先として金が連想されやすいということです。
昔から「有事の金」と言われるほど、金は戦争や災害などに強い資産として知られています。さらに、現物で買えば万が一の場合には持ち運びすることも可能です。
そのため、リスクオフでは金に注目が集まり、需要が高まる傾向があります。
2. 価値がゼロにならない
金は価値がゼロになることがありません。なぜなら、世界中でその価値が認められているからです。
例えば、株式や債券は倒産などにより価値が無くなることがありますが、金は無価値になったことがありません。加えて、金の埋蔵量には限りがあり、希少価値が高いのです。
したがって、価値を失わない金は、資産を守るのに適した金融商品だと言えます。
3. インフレに強い
金はインフレに強いという側面もあります。インフレ局面では金価格は上昇する傾向があり、価値が減りにくいのです。
例えば、株や不動産もインフレに強い資産と言われますが、景気が悪化すると株や不動産は売られやすくなってしまいます。そのため、インフレに強く、景気の悪化で買われやすい金はリスクオフで選ばれやすいのです。
4. 流動性が高い
流動性が高いことも、金の大きな魅力です。というのも、流動性が高ければ、好きなタイミングで現金化しやすいからです。つまり、金は通貨の代わりのような存在と考えることができます。
金は世界中で人気があることから、大きな市場があり、膨大な量が公正な価格で取引されています。したがって、金はすぐに現金化しやすく、急な現金需要にも柔軟に対応できる特徴があります。
まとめ
リスクオンとリスクオフは市場心理を表現する用語であり、判断ができるようになると、広範囲の市場を見通すことが可能です。つまり、より多くの銘柄のトレンドの方向性を把握し、取引チャンスを増やすことができます。
初心者から中上級者にレベルアップするために、リスクオンとリスクオフに関する知識をしっかりと身に付けるようにしましょう。
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