ECBは政策金利維持の公算も 14日理事会 ユーロ高は頭打ちか
ECBの14日の理事会は、10会合ぶりの政策金利維持の予想が多数派。円安ユーロ高の流れは頭打ちになっている。
欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で利上げをめぐる難しい判断を迫られる。市場予想では利上げを見送って、10会合ぶりに政策金利を維持するとの予想がわずかに優勢だが、利上げ実施の見通しも強い。ユーロ圏経済は物価上昇と低成長に同時に直面する苦境に立っており、理事会の結果は見極めづらいのが現状だ。ただし以前に比べて利上げ見送りが現実味を増す中、ユーロ円相場で進んできた円安ユーロ高は頭打ちになってきた。仮にECBが利上げを決めてユーロ高圧力が強まる場合でも、ECBが発するメッセージ次第でユーロ高の動きが限定的になる可能性もある。
ECB理事会は利上げ見送り予想が43%
ECBは日本時間14日午後9時15分に理事会の結果を発表する。ロイター通信のエコノミスト調査では、69人中39人(約57%)が政策金利の据え置きを予想。0.25%利上げ予想の30人(約43%)を超える多数派だ。また金融情報会社リフィニティブのデータによると、14日の理事会での利上げ見送りについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間12日午後1時30分の段階で約57%。0.25%利上げの約43%を上回っている。
理事会の結果をめぐる予想が割れるのは、ユーロ圏の経済状態の悪化が進んでいるからだ。ECBは物価上昇抑制を目指し、7月まで9会合連続で政策金利の下限にあたる中銀預金金利をマイナス0.5%から3.75%まで引き上げてきた。しかし8月の消費者物価指数(CPI)の伸び率は、エネルギー、食品、酒類、タバコを除いたコア指数で前年同月比5.3%。3月につけたピークの5.7%からの低下はわずかにとどまっている。クリスティーヌ・ラガルド総裁は「物価上昇との戦いに勝利したわけではない」との立場だ。
同時にユーロ圏では経済成長の減速が目立つ。2023年4-6月期GDPの実質成長率は前期比0.1%増。2022年10-12月期にマイナス0.1%を記録してから、0%前後の低成長が続く。ECBの政策金利引き上げを背景に、ユーロ圏の銀行は企業や個人への貸し出し条件を厳格化しており、経済活動が弱まっているようだ。このためECBは物価上昇抑制を目指して利上げをすれば、経済活動をさらに弱め、再びマイナス成長に陥ってしまう可能性がある。
ユーロ円相場は15年ぶりのユーロ高水準で頭打ちに
こうした中、ユーロ円相場(EUR/JPY)では円安ユーロ高の流れが弱まってきた。リフィニティブによると、ユーロ円相場では8月のユーロ圏のCPIが発表される前日の8月30日、ドイツのCPIの伸び率が想定以上に高かったことからECBの利上げが意識され、一時、1ユーロ=159.76円をつけた。しかし31日には円が対ユーロで買い戻され、ニューヨーク市場での終値は157.80円まで円高ユーロ安に振れた。30日につけた159円台は2008年9月1日以来15年ぶりの水準だったが、ECBが利上げの手を緩める可能性も出てくる中、ユーロ買いの勢いは限定的になっているようだ。
仮にECBが14日の理事会で利上げを決めれば、ユーロ高圧力は強まる。ただし経済状況を踏まえれば、これまでのような一本調子での利上げが難しくなっているとの見方も根強く、ユーロ円相場の動向はラガルド氏が理事会後の会見でどのようなメッセージを発するかにも左右されそうだ。
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