マイクロソフト、クラウド成長減速か 30日決算 株価下落のおそれも
マイクロソフトの10-12月期決算はクラウド事業の成長が減速する見通し。AIビジネスの長期的な展望が問われる。
マイクロソフトが30日の取引時間後に発表する2023年10-12月期決算はクラウド事業の成長減速が見込まれている。クラウド事業は企業向けの人工知能(AI)サービスの提供基盤として将来性が期待されており、成長減速は投資家の失望につながる可能性ある。一方、マイクロソフトは個人向けの有料AIサービスの開始を発表するなど、AIの本格普及に向けた布石を打っており、AIビジネスの長期的な展望にも投資家の注目が集まりそうだ。
マイクロソフトの10-12月期決算は総収入が16%増の見込み
マイクロソフトはアメリカ東部時間の30日午後5時30分(日本時間31日午前7時30分)に決算会見を開く。LSEGのデータによると、マイクロソフトの10-12月期決算に関する事前予想は、総収入が前年同期比15.8%増の611.01億ドル、1株当たり利益(EPS)が25.5%増の2.76ドルと予想されている。マイクロソフトの過去17回の四半期決算のうち、総収入が事前予想を下回ったのは2022年4-6月期と10-12月期の2回。1株当たり利益も同じタイミングで事前予想を下回っている。
LSEGのデータによると、マイクロソフトの株価(MSFT)は2022年の1年間で約28%下落。2023年は56.80%上昇した。22日の終値は396.51ドルで、1月に入ってから5.4%高。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるハイテク大手7銘柄の中では、半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)の20.5%、SNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)の7.9%に次ぐ成績となっている。
LSEGによると、直近の株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は32.33倍。クラウド事業で競合するアマゾン・コム(41.65倍、AMZN)よりは割安で、アルファベット(21.58倍、GOOGL)よりは割高といえる。アナリストが提示する目標株価の平均は420.53ドルで、現状より約6%高い。54人のうち20人が強い買い、30人が買いを推奨。残りの4人は維持を勧めている。
クラウド事業の10-12月期の成長率は減速する見通し
マイクロソフトは前回(7-9月期)の決算発表でクラウド事業の収入の伸び率が19.4%となり、4四半期ぶりに前期の伸び率を上回った。一方、10-12月期の見通しについては16.7-18.1%増にあたる水準を提示しており、クラウド事業の成長が減速するとしている。市場予想は17.5%増で、マイクロソフトの見通しに沿った数字だ。7-9月期のクラウド事業の好調さは、長期金利(10年物米国債利回り)の低下とともに、マイクロソフト株上昇のきっかけになっただけに、10-12月期でクラウド事業が減速すれば株価には下落圧力がかかりそうだ。
こうした中、マイクロソフトはAIの本格普及に向けて、個人向けの有料サービスの展開に乗り出している。15日には、文書作成の「ワード」や表計算の「エクセル」、電子メールの「アウトルック」といったマイクロソフトのアプリケーションの活用をAIで支援するサービスの展開を拡充すると発表した。個人向けの「コパイロット・プロ」は月額20ドル(日本では税込み3200円)で提供する。利用者が文章を作成したりメールに返信したりする際に、AIが文案を提示してくれるといった機能で業務の効率化が図れるという。
マイクロソフトのサティヤ・ナデラCEOは10月の決算会見で「AI時代を人々や企業にとって現実のものとする」と述べており、個人向け有料サービスの展開は具体的な道筋を示す一手といえる。ただ、有料サービスがどれだけ収益性に貢献するかは未知数で、30日の決算発表ではマイクロソフトのAIビジネスの長期的な展望が株価を左右することも想定されそうだ。
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