日経平均を襲う海外の売り 半導体株安併発 S&P500上昇には歪み
日経平均は3週ぶり反落。5月下旬以降の海外投資家の売りが背景だ。アメリカのS&P500は3連騰だが、エヌビディアなど大手ハイテク株頼みの感もある。
日経平均株価への海外投資家の期待が薄らいでいる。日経平均の21日の終値は1週間前比で0.56%安となり、3週ぶりに反落。3万9000円台回復に向けた勢いは乏しい。5月下旬以降、海外投資家の日本株売りが続いており、半導体株の下落傾向も目立つ。一方、アメリカの株式市場ではS&P500種株価指数が好調。しかし半導体大手NVIDIA(エヌビディア)など大手ハイテク株への依存は大きく、足元が万全とはいえない。大手ハイテク株を除けば、米国の株式市場も見た目ほどは好調とはいえず、日経平均やS&P500の今後の見通しへの不安もくすぶり続けそうだ。
日経平均は3週ぶり下落 勢いに乏しく見通し不安
日経平均(N225)の21日の終値は1週間前比218.09円安の3万8596.47円。5月最終週以来、3週ぶりの週次での値下がりとなった。週初めの17日に712円安をつけて以降、3万9000円台回復に向けた力強い値動きはなく、見通しに不安が残る。
個別銘柄ではソフトバンクグループ(9984)が21日に前日比3.14%安となり、週次でも日経平均の足を引っ張った。孫正義会長兼社長がこの日の株主総会で、自社株買いに否定的な見通しを示したと報じられ、悪材料視されたようだ。孫氏は株主総会で、人間の1万倍の英知を持つ「ASI(Artificial Super Intelligence)」の実現を本気で目指すと述べるとともに、「自社株買いするのか、配当どうするのかとかは、小さいじゃないですか」と笑いを誘っていた。
海外投資家は4週連続で日本株売り越し 半導体株下落
日経平均の不振の背景には海外投資家の日本株売りもある。日本取引所グループが20日に発表したデータでは、前週(10-14日)の海外投資家による日本株の売り越し額は東京証券取引所と名古屋証券取引所の合計で2494億円。5月20-24日週から4週連続の売り越しで、2023年9月以来の連続売り越し記録となった。5月下旬には日本銀行の植田和男総裁らから利上げに前向きなタカ派発言が出ており、海外投資家の日本株への評価を悪くした可能性もありそうだ。
アメリカのS&P500は3週連続で上昇 大手ハイテクが牽引
一方、米国の株式市場は好調が続く。S&P500(SPX)の21日の終値は1週間前比0.61%高の5464.62。3週連続での値上がりを確保した。長期金利(10年物米国債利回り)が12日以降、4.2%台で推移しており、株式相場の見通しを明るくしている。
ただしS&P500の上昇はマグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社に依存している。マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)の3社はそれぞれ時価総額が3兆ドルを超え、3社合計ではS&P500全体の21%を占める。これにアマゾン・コム(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META)、アルファベット(GOOGL)、テスラ(TSLA)の4社を加えた7社合計の時価総額は21日終値時点で約14兆3300億ドル。S&P500全体に占める割合は31.2%にのぼる。S&P500は時価総額の大きい銘柄の株価を大きく評価する算出方法をとっており、7社の影響は絶大だ。
エヌビディアも9週ぶり下落 AIブームの見通しは?
こうしたS&P500の「歪み」はS&Pグローバルが公表している時価総額を考慮せずに算出したS&P500の値動きにも表れている。S&P500自身の2023年末比での伸び率は21日終値時点で14.57%だが、時価総額を考慮しないS&P500の伸び率は5月下旬以降の横ばい傾向が響き、4.52%という低さだ。
大手ハイテク株の成長期待を支える人工知能(AI)ブームの将来性は見通しが確実なわけではない。エヌビディアの株価は20日、21日の連続で3%超の値下がりに見舞われ、週次では4.03%安。4月下旬から続いてきた連騰が途絶え、9週ぶりの週次下落となった。
日経平均や時価総額を考慮しないS&P500の5月下旬以降の停滞は、投資家が大手ハイテク株以外には強気になれない姿を示している可能性がある。7月以降の企業決算シーズンを控え、今後、日米の株価が不安定になるとの見通しも成り立ちそうだ。
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