円安の頭打ちも 日本の長期金利上昇 アメリカ物価の見通しがカギ
日本の長期金利が1.1%台をつけ、ドル円相場で円高が進行。日銀首脳のタカ派発言が背景だが、米国物価の見通しがドル高圧力となる可能性は残る。
ドル円相場での円安が頭打ちになる環境が強まっている。日本の長期金利(10年物国債利回り)が約13年ぶりに1.1%台をつけるなど、金利の先高観が増しているためだ。30日のドル円相場では一時、約1週間ぶりの1ドル=156円台前半まで円高が進む場面もあった。背景には円安是正の意図をにじませる日本銀行首脳の発言があるようだ。ただ、長期金利はアメリカでも上昇傾向が出ており、日米金利差は横ばい状態が続く。今後、米国のインフレ沈静化が進まないとの見通しが浸透していけば、米国の長期金利上昇が再燃して円安が進む可能性もある。
日本の長期金利が1.103%まで上昇 円安の要因に
LSEGのデータによると、日本の長期金利は30日に一時、1.103%をつけた。2011年7月22日の高値(1.113%)以来の水準だ。長期金利は2023年末段階では0.616%だったことを考えれば、5か月の間で約0.5%ポイントの金利上昇が進んだことになる。
こうした中、30日のドル円相場(USD/JPY)は一時、1ドル=156.37円をつけた。22日の取引時間中につけた156.10円以来の円高水準だ。前日の取引でつけた157.76円との比較では1.39円の円高進行といえる。ドル円相場は31日午前の東京市場では156円台後半で推移している。
日銀の植田和男総裁らの発言のタカ色が強まる
円高を引き起こした長期金利上昇の背景には日銀首脳から相次ぐタカ派発言がありそうだ。植田和男総裁は27日に日銀主催の国際イベントでのあいさつで「インフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功したように思う」と述べ、日本の物価上昇の見通しが上向いてきたことを指摘。内田真一副総裁も同じイベントでの講演で「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入った」と言及。今後は政策金利の水準が高くなり、不況時に利下げで経済活動を促すだけの余裕をもてるとの見方を示唆した。
日銀首脳の発言のトーンは1か月前までとは大きく様変わりしている。内田氏は2月8日の講演では「マイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくい」と述べ、金利の先高観を払拭しようとしていた。日銀はその後、3月19日にマイナス金利など大規模金融緩和策を終了させ、4月26日には物価見通しを引き上げているが、植田氏の金融政策決定会合後の記者会見はいずれも利上げへのハードルの高さを感じさせる内容だった。
トーンの変化には日銀の円安是正の意図が隠れていそうだ。4月までの植田氏や内田氏の発言はいずれもドル円相場での円安を加速させる要因になったからだ。このところ、円安が輸入物価のインフレを招いて国民生活や企業活動を厳しくしているとの不満も目立ち、直近の植田氏と内田氏の発言には今度は日本の低金利定着観測を払拭しようという狙いがうかがえる。
ドル円相場の見通しはアメリカのインフレの行方が左右
ただ、日銀の思惑通りに今後のドル円相場で円高見通しが強まるかには不透明さもある。米国でも長期金利が29日に約1か月ぶりの4.6%台をつけるなど、改めて金利の先高観が頭をもたげているからだ。結果として、日本の長期金利上昇にも関わらず、日米金利差の縮小は進まず、3.5%ポイント前後での横ばいが続く。
足元の米国での金利上昇はインフレ減速への過度な期待が修正されつつあることが要因だ。日本時間31日午後9時30分に発表される、4月の個人消費支出(PCE)物価指数の結果次第では、改めて長期金利が上がってドル高圧力が強まる可能性もある。
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