円安阻止へ日銀は動くか 162円目前 アメリカ大統領選も波乱要因に
ドル円相場は37年半ぶりの円安水準が継続。米国からの円高材料が出にくく、日銀の国債購入減額の円高効果も期待しにくい。
ドル円相場での円安が162円台へと迫っている。5日の東京市場は1ドル=161円前後で推移。37年半ぶりという歴史的な円安の勢いは続いたままだ。このところの円安の背景にあるのは、日本銀行の金融緩和維持にこだわる姿勢。一方、アメリカでは11月の大統領選挙をめぐる思惑が金利を上昇させる場面も出ており、当面は円安を食い止める材料が出にくいようにみえる。日銀による国債買い入れ減額をめぐる見通しが円安にブレーキをかける可能性も高いとはいえず、今後の日本の賃金や物価をめぐる経済指標が円安を後押しすることも考えられる。
ドル円相場は37年半ぶりの円安水準 一時は161.99円も
ドル円相場(USD/JPY)では、6月28日の1ドル=161円台に突入後も、円安圧力の強さが感じられている。LSEGによると、7月3日には一時、161.99円をつけ、1986年12月23日(162.25円)以来の水準となった。37年半ぶりの円安水準は、円安が底を抜けたとの印象も強い。
日銀の大規模金融緩和終了後、円安に歯止めかからず
今回の円安局面は、日銀が3月19日に大規模金融緩和を終了させて以降、歯止めがかからなくなったかにみえる。マイナス金利政策やイールド・カーブ・コントロール(YCC)などの終了は利上げ方向へのステップだが、植田和男総裁らは「当面、緩和的な金融環境が継続する」との立場も強調。前日には1ドル=149円台だったドル円相場は、その後1か月あまりで160円台まで円安に動いた。ポンドやユーロなどの他の主要通貨が対ドルで横ばいといえる値動きなのとは対照的だ。
ドル円相場の値動きをさらにさかのぼれば、ドル円相場が1ドル=118円台だった2022年3月17日の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ開始につきあたる。米国の金利上昇は各国通貨の下落につながり、ドル円相場は10月には151円台に達した。その後は、日本政府による為替介入や米国の物価上昇が頭打ちになるとの見通しから、ドル円相場は円安方向に動いたが、2023年4月9日の植田氏の日銀総裁就任をはさみ、円は他通貨よりも値下がりの度合いが強くなっている。賃上げと物価上昇の好循環の実現を辛抱強く見極めようとする植田氏の姿勢が円安要因になった。
アメリカ大統領選での共和党勝利観測が金利高要因に
こうした中、足元の金融市場では、米国の政治や経済の動向がドル高圧力になるとの見通しも出てきた。米国の長期金利(10年物米国債利回り)は1日に4.4%台に上昇。11月の大統領選に関して、ドナルド・トランプ前大統領の勝利と上下両院での共和党多数派獲得の可能性が高まり、財政規律が緩みやすくなるとの見方が米国債の価格を下落させた結果だ。また、FRBのジェローム・パウエル議長は2日、ポルトガルで開かれた欧州中央銀行(ECB)主催のイベントに参加し、利下げを急がない立場を維持している。結果として米国と日本の長期金利差は縮まりにくくなってきた。
日銀の国債購入減額でも円安継続の見通しも
このため今後の円安の見通しは、日銀の動きにかかってくる。焦点のひとつとなるのは、日銀が9、10日に開く「債券市場参加者会合」。日銀が月額6兆円規模で行っている国債買い入れの減額について、銀行や証券会社などから意見を聞く。日銀は6月の金融政策決定会合で減額方針を公表済みで、今回の会合に際して減額の幅やペースが分かれば、長期金利上昇を通じた円高要因になる可能性もある。
ただ、植田氏は国債買い入れの減額は金融政策の手段として行うわけではないとし、市場参加者からの意見聴取は市場に波乱を起こさないための手段だとしている。日本経済の金利水準の調整は、日銀が政策金利と位置付ける短期金利を操作することで行うという「正攻法」にこだわる姿勢だ。こうした日銀の立場を踏まえれば、債券市場参加者会合が日銀からのメッセージとして相場を動かすことは考えにくいとの予想も成り立つ。
日本経済をめぐっては、8日に5月の毎月勤労統計、19日に6月の消費者物価指数(CPI)が発表される。これらの経済指標で、賃上げと物価上昇の好循環が遠ざかったと感じられる事態になれば、円安材料として受け止められる可能性もありそうだ。
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