テスラ、株価上昇に難所　29日決算　新型車販売の見通し守れるか？

電気自動車（EV）大手、テスラが29日に行う2024年10-12月期決算発表は、好調なテスラの株価にとって難所となりそうだ。テスラの株価は3か月前の前回（7-9月期）決算発表での、2025年通期の販売台数が大幅に増えるとの見通しが好感されて上昇。さらに大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利も新たな起爆剤となり、最高値を3年1か月ぶりに更新した。こうした中、今回の決算発表が不評を買えば、期待が急激に冷え込む可能性がある。中でもイーロン・マスクCEOが自信を示してきた2025年前半の新型車投入について、具体的な情報発信がなければ投資家の失望感につながるおそれがあり、テスラの株価の今後の見通しに悪影響が出る可能性がある。

テスラの2024年10-12月期決算は総収入が9％増の見通し　1株当たり利益も増加予想

テスラはアメリカ東部時間の29日午後5時30分（日本時間30日午前7時30分）から決算会見を開く。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、総収入は前年同期比9.0％増の274.41億ドルになる見通し。テスラ決算で投資家が注目する調整ベースでの1株当たり利益（EPS）は5.6％増の0.75ドルと予想されている。テスラは直近19回の四半期決算のうち、前回を含む7回で、総収入が市場予想を超えられなかった。また、1株当たり利益でも7回で市場予想をクリアできなかった。

テスラの株価は2024年に62.52％高　割高感は急激に上昇

テスラの株価（TSLA）は2024年に62.52％高の値上がりを達成した。上半期は20.36％安と不調だったものの、下半期の6か月で株価が2倍に上昇し、通年での大幅高につなげた。テスラの株価は2023年も2倍になっており、投資家の期待が保たれている形だ。一方、1月21日の終値は424.07ドルで、2024年末比で4.77％安となっている。

ブルームバーグによると、直近の株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率（PER）は130倍程度で、前回の決算発表があった2024年10月23日の約70倍から大きく割高感が増している。アナリストが提示する目標株価の平均は326ドル程度で、現状よりも23％ほど低い水準だ。59人のアナリストのうち、28人は買い、17人は維持を推奨。残り14人は売りを勧めており、大手ハイテク株の中では株価に悲観的な声が多い。

テスラは2025年前半の新型車投入を予告　修正があれば株価下落も

テスラの株価に対する不安の大きさの背景には、期待先行で値上がりが進んできた事情がある。マスク氏は2024年10月23日の7-9月期決算会見で、2025年の販売台数に関し、「20-30％」の成長との見通しを提示。翌24日の終値は前日比21.92％高という11年5か月ぶりの急騰を記録した。またマスク氏との蜜月関係が知られるトランプ氏の大統領選での勝利が確実になった11月6日にもテスラの株価は14.75％高と急上昇。12月11日には2021年11月4日以来の最高値更新に至っている。しかし販売台数増加の道筋やトランプ氏の勝利が業績に及ぼす好影響は明らかではなく、小さな悪材料でも投資家の期待が一気に冷え込むリスクが潜んでいそうだ。

こうした中、29日の決算会見では新型車投入の見通しが注目される。マスク氏は前回の決算発表では、「より低価格な新型車」の販売を「2025年前半」に始めるための軌道に乗っていると説明していた。会見ではより具体的な日程感が示されなければ、公約実現の確度に疑問符がつく可能性もある。新型車の投入がなければ2025年の販売台数20-30％増の実現の難易度が増すことは避けられず、株価の下落要因とみなされそうだ。テスラの2024年の販売台数は178万9226台で、前年比1.07％減となっている。

またトランプ氏は大統領就任初日の20日にEV優遇政策を見直すとする大統領令に署名。テスラのEV事業にとっての逆風になることは明らかだ。さらにトランプ氏の経済政策が金利水準の高止まりにつながれば、自動車ローン金利負担の高さもテスラにとっての悪材料になる。トランプ氏がマスク氏を連邦政府の効率化を監視する組織のトップとして重用していることは、テスラが目指す自動運転タクシーの実現に向けた規制緩和の期待も感じさせるが、29日の決算発表では短期的な業績の見通しが注目されるとみられ、株価には不安が山積しているといえそうだ。