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FRB利上げ見送り濃厚 8月物価減速 S&P500小幅高止まり

アメリカの8月のCPIは減速したが、歴史的な厳しさであることに変わりはない。金利の先高観は株式相場を下押ししている。

出所:ブルームバーグ

アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)が19、20日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの観測が支配的になっている。13日に発表された8月の消費者物価指数(CPI)の結果がほぼ事前予想通りの結果で、基調的な物価上昇の減速を感じさせたためだ。ただし米国の物価上昇が歴史的な高さであることに変わりはなく、FRBは安易に利下げに舵を切れる状況ではない。今後、米国の金利水準が高止まりする可能性は拭えず、13日の株式市場ではS&P500種株価指数が小幅高に留まるなど、先行きへの不安は消えていない。

8月のCPIはコア指数の伸び率が4.3%に低下

CMEグループのデータによると、20日までのFOMCでの利上げ見送りについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間14日午前11時すぎの段階で97%。前日午前の水準(92%)から上昇した。FRBは物価上昇の抑制を狙い、2022年3月に利上げに着手。2023年6月に利上げを見送った後、7月は改めて0.25%の利上げを行った。今回のFOMCで利上げが見送られれば2会合ぶりとなる。

利上げ見送り観測が強まった理由は、8月のCPIで物価上昇の落ち着きが見られたからだ。食品とエネルギーを除くコア指数の伸び率は前年同月比4.3%で、2021年9月(4.0%)以来の低さ。事前の市場予想と同じ結果で、消費の強さが物価を押し上げる傾向の弱まりを感じさせた。一方、総合指数の伸び率は3.7%で、2か月連続で前月の実績を上回った。しかしサウジアラビアの原油生産縮小継続を背景にしたガソリン価格上昇の影響が大きく、消費の強さの反映ではないとみることができる。

アメリカの消費者物価指数(CPI、総合、コア)の伸び率の推移

また、8月のCPIを家賃上昇の影響を考慮して分析すると、物価上昇圧力の弱まりはさらに鮮明になる。コア指数から家賃(持ち家の帰属家賃含む)も除いた指数の伸び率は2.2%で、FRBが目標とする2%に近い水準。また、家賃の伸び率は7.3%と高いものの、3月につけたピーク(8.2%)からの低下傾向がみてとれる。

アメリカの消費者物価指数(CPI)における家賃の動向

米国の物価上昇率は歴史的な高さ

ただし米国の物価上昇が依然として歴史的な高水準にあることは間違いない。2022年9月に記録したCPIコア指数の伸び率のピーク(6.6%)は1982年8月(7.1%)以来、40年1か月ぶりの高さだった。当時は1978年のイラン革命などを機に高まった第2次オイルショックの混乱の影響が残っていた時期だ。今回発表された8月のコア指数の伸び率も、2021年以降の物価上昇期を除けば、1991年12月(4.4%)以来の高さで、やはり異例の物価上昇といえる。

こうした中、FRBは政策金利を2001年1月以来の水準となる5.25-5.50%にまで引き上げてきた。この結果、長期金利(10年物米国債利回り)は8月に15年9か月ぶりの高さに達し、経済活動を冷やしてはいるが、物価上昇の厳しさを考えれば、FRBが「勝利宣言」を出せる状況ではない。ジェローム・パウエル議長は8月25日のワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で、このところの物価上昇率低下について「物価上昇率が持続的に目標に向けて下がっているという確信を得る過程の始まりに過ぎない」と述べている

アメリカの消費者物価指数(CPI、コア)の上昇率と長期金利の長期的な推移

物価上昇圧力の落ち着きが感じられた13日、S&P500種(SPX)の終値は前日比0.12%高に留まった。長期金利は4.248%で、9月5日以降の4.2%台が続いている。足元での原油価格上昇が今後、物価全体を押し上げる方向に働くおそれもあり、金利高が株式相場を下押しする構図が長期化する可能性もありそうだ。


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