オーストラリア経済に過熱感? 豪ドル96円台 円高基調でも崩れず
円高基調が続く中、豪ドルの値動きが他通貨よりも底堅い。背景には労働市場過熱が物価高懸念をくすぶらせている事情がある。
外国為替市場で円高基調が続く中、豪ドルの底堅さが目立っている。豪ドルの対円レートは12月に入ってから約1.5%下落しているが、約4%下落のドルや、3%前後下落のユーロやポンドと比べれば穏やかな値下がり。日本銀行のマイナス金利解除観測にも関わらず、一方的な円高豪ドル安にはつながっていない。背景にはオーストラリアの労働市場の過熱感が物価上昇懸念をくすぶらせている事情がある。さらに日銀のマイナス金利解除のタイミングにも不透明感はあり、今後も豪ドルの値動きが他通貨と一線を画する場面も出てきそうだ。
オーストラリアドルは12月に入って1.5%安
25日の東京市場の豪ドル円相場(AUD/JPY)は1豪ドル=96円台半ばで推移している。97円台後半だった11月末の水準からは1.5%程度の豪ドル安だ。オーストラリアの中央銀行にあたるオーストラリア準備銀行(RBA)は5日の理事会で2会合ぶりに利上げを見送り、金利の先高観が緩和。一方、日銀のマイナス金利解除観測は7日の植田和男総裁の「チャレンジング」発言を機に強まり、円が買われ、豪ドルが売られやすくなっている。
オーストラリアの11月の雇用者数は予想以上の伸び
豪ドルが他の3通貨より買われやすくなっている背景には、オーストラリアの物価上昇に対する懸念が消えないことがある。オーストラリア統計局が14日に発表した11月の雇用者数(季節調整済み)は1425万7500人で、10月から6万1500人増加。ロイターがまとめたエコノミスト調査での見込みは1万1000人の増加だっただけに、予想以上にオーストラリアの雇用が強いといえる結果だった。LSEGのデータによると、2024年2月のRBA理事会での利上げ見送りが金融市場で確実視されている状況に変わりはないが、物価上昇圧力の根強さが意識されやすくなっている。
また、2024年春が有力視される日銀のマイナス金利解除のタイミングも確実なわけではない。植田氏は25日の経団連での講演で、賃上げと物価上昇の好循環が達成される確度について「現時点では、なお十分に高いわけではない」と言及。焦点となる企業が人件費上昇分を価格に上乗せする動きが出るかどうかに関して、「企業からの声をうかがいますと、労務費上昇の販売価格への転嫁は容易ではないとの見方が、なお多いとの印象も持っています」と述べた。
オーストラリアの消費者物価指数(CPI)の総合指数の伸び率は10月の段階で前年同月比4.9%。目標とする2-3%の水準にはまだ距離がある。物価上昇率が2%台まで下がり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが視野に入るアメリカなどとは状況は異なる。オーストラリア統計局が来年1月10日に発表する11月CPIなどの結果次第で、豪ドルがさらに買われやすくなる場面も想定されそうだ。
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