円高基調に転換か ドル円1か月半ぶり147円台 対ユーロなどでも
最弱通貨の円が買われ始めた。FRBなど各中銀が利上げを打ち止めにするとの観測が円買いの要因になっている。
外国為替相場で円高の動きが強まりだした。21日のドル円相場は約1か月半ぶりの147円台で推移しており、約1週間で3%の円高が進行。7月以降の円安は11月に入ってブレーキがかかっていたが、ここのところは一気に円高基調となっている形だ。また円はユーロやポンド、豪ドルに対しても買われ始めた。円は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに着手した2022年以降の最弱通貨として位置づけられてきたが、各中銀が利上げを見送る中、相場の流れが円売りから円買いに転じている可能性がある。
約1週間で4.7円の円高進行
21日の東京市場のドル円相場(USD/JPY)は午後2時すぎの段階で1ドル=147円台半ばで取引されている。147円台は10月3日以来。前日のニューヨーク市場の終値からは約1円の円高ドル安。13日につけた高値(151.92円)からは一時、約4.7円(約3.1%)も円高が進行した形になっている。
ドル円相場は7月の137円台前半から直近の152円目前まで約4か月で15円近くも円安方向に進んできた。しかしFRBが11月1日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で2会合連続の利上げ見送りを決め、ジェローム・パウエル議長が夏場の物価上昇減速を前向きに評価すると円安は頭打ちに。その後、3日の米国の10月雇用統計が労働市場の過熱感の和らぎを示し、14日発表の10月の消費者物価指数(CPI)で物価上昇減速が感じられると、円高への動きが強まった。
ドル円相場での円高進行の要因はFRBの利上げが打ち止めになるとの見方が浸透してきたことにある。CMEグループのデータによると、金融市場では2024年5月までにはFRBが利下げに踏み切るとの見方が優勢だ。また、こうした米国の利上げ打ち止め観測の結果、円が対ドルで強くなると同時に、ユーロなども対ドルで強くなってきたが、このところは円を押し上げる効果の方が強くなっている。
ECBなどもすでに利上げを見送り
円はFRBが利上げに着手した2022年以降の最弱通貨と位置付けられてきた。21日の為替相場の水準を2022年1月初めと比較すると、円はドルに対して20%以上も安くなっているのに対して、ユーロは約3%安、ポンドは約7%安、豪ドルは約9%安に留まっている。日本銀行がFRBの利上げ開始後も大規模金融緩和を維持してきたのに対して、欧州中央銀行(ECB)などは政策金利を引き上げており、各通貨とドルとの金利差が日米間ほどは広がらなかったことが影響したとみられる。
ただ、ユーロ圏や英国、オーストラリアでも米国同様に物価上昇減速の流れが出ており、各中銀は利上げにブレーキをかけている。ECBは10月に11会合ぶりの利上げ見送りを決断。イギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行(BOE)も11月まで2回連続で政策金利を据え置いた。オーストラリア準備銀行(RBA)は7日に5会合ぶりの利上げを決めたが、声明文では利上げ打ち止めを示唆している。
こうした中、円高の行方は日本の物価動向に左右される局面が想定される。24日発表の10月の消費者物価指数の重要性が高まってきそうだ。
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