円高圧力揺るがず 米国経済見通し不安 140円台前半の可能性?
ドル円相場は1か月半で10円の円高が進行。日米金利差は5か月ぶりの小ささで、140円台前半までの円高進行も想定される。
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ドル円相場での円高圧力が続いている。ドル円相場は日本時間28日午前の取引で、1ドル=149円台で推移。朝方に発表された東京都区部の2月消費者物価指数(CPI、中旬速報値)の伸び率は市場予想を下回ったものの、円安方向への値動きは長続きせず、1か月半で10円の円高が進んだ流れが消えてない。円高圧力の要因はアメリカ経済の見通し不安を背景として、米国の長期金利(10年物国債利回り)が低下していること。結果として日米の長期金利差は5か月ぶりの小ささとなっており、140円台前半まで円高が進行する可能性も出てきた。今後のドル円相場の見通しをめぐっては、米国の物価に関する経済指標の結果が焦点となりそうだ。
ドル円相場は149円台前半 1か月半で10円の円高が進行
ドル円相場(USD/JPY)は28日の東京市場で1ドル=149円台半ばで推移している。25日につけた148.57円からは円安方向に振れているが、1月上旬からの円高進行の流れは崩れていない。ブルームバーグによると、ドル円相場は米国でのトランプ政権発足を控えていた1月10日に158.87円まで円安が進む局面もあったが、その後、1か月半で10円の円高が進んだことになる。
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円高圧力の強さは28日朝に発表された東京都区部の2月CPIへの反応からも感じられた。都区部2月CPIの伸び率は、総合指数が前年同月比2.9%、生鮮食品を除いたコア指数が2.2%、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数が1.9%で、それぞれブルームバーグがまとめた市場予想を下回る結果。日本銀行の利上げ観測を弱める内容で、ドル円相場は一時、150.15円まで円安にふれたが、すぐに149円台まで円高に戻した。
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日米長期金利差は5か月ぶりの小ささ 140-143円台も想定される状況
円高見通しが崩れない背景には米国経済への不安がある。14日に発表された1月小売売上高が市場予想よりも弱かったことなどが悪材料視されており、米連邦準備制度理事会(FRB)が労働市場を下支えする狙いから利下げに踏み切るシナリオもちらつく。ブルームバーグによると、米国の長期金利は26日に一時、4.243%をつけており、2024年12月11日(4.199%)以来の低さを記録した。
この結果、日米の金利差は縮小し、27日のニューヨーク市場の終値では2.864%ポイントとなった。2024年9月17日(2.826%ポイント)以来の小ささだ。当時のドル円相場は1ドル=140-143円台で取引されていただけに、足元のドル円相場がさらに円高方向に動くとの見通しも成り立ちそうだ。
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トランプ氏の高関税政策は円安要因 メキシコ、カナダへの25%関税は実施へ
一方、米国経済をめぐってはトランプ氏が引き続き、高関税政策をちらつかせており、円安要因とみることもできる。高関税政策は物価上昇圧力を強め、FRBを利下げから遠のかせる材料といえるからだ。トランプ氏は27日、自身のSNSトゥルース・ソーシャルへの投稿で、メキシコとカナダからの輸入品に対する25%の関税を3月4日に発動することについて「計画通りに実施される」とした。中国に対しても、2月4日に発動した10%の追加関税に加え、さらに10%の関税を課すとしている。
また、28日に発表された2024年10-12月期のGDP改定値は実質成長率が速報値と同じ前期比年率2.3%だった。個人消費の伸び率も4.2%のままで修正はなく、米国経済の見通しへの不安を強める内容ではなかった。
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米国の労働市場悪化や投資家のリスク回避姿勢は円高要因に
ただ、ドル円相場の今後の見通しでは、米国経済の弱さが引き続き意識されて、円高要因になる可能性もある。28日に発表された失業保険関連統計は、16-22日週の新規失業保険申請件数が24.2万件となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(22.1万件)を上回る結果。2024年12月1-7日週(24.2万件)以来の高さで、今後も労働市場の悪化が進めば、FRBの利下げを連想させる円高要因となりえる。
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さらに半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が26日に発表した四半期決算が投資家の期待に応えられず、27日の株式市場でS&P500種株価指数(SPX)が前日比1.59%安と急落していることも、投資家のリスク回避姿勢を強め、円が買われる要因といえそうだ。
1月PCE物価指数はコア指数の伸び率が2.6%の見通し 上振れで円高の展開も
米国では28日午前8時30分(日本時間28日午後10時30分)に1月の個人消費支出(PCE)物価指数が発表される。ブルームバーグがまとめた事前予想によると、1月PCE物価指数の伸び率は、総合指数で前年同月比2.5%、食品とエネルギーを除いたコア指数で2.6%となる見通しだ。物価上昇率が上振れた場合には、FRBの利下げを遠のかせる円安要因となりえるが、米国経済の弱まりにも関わらず高関税で物価が上昇するという悪いシナリオが意識された場合には、リスク回避姿勢が円高圧力として働く展開も残っている。
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